2013年02月01日

世界のSya窓からVol.2「あれのバラ」

久々の世界のSya窓から。

〜今回はあのバラの原点を訪ねてみたいと思います(NA:石丸謙二郎)


DSC_0193.jpg
私のショーをご覧頂いた方には「あのバラ」が何かはなんとなく想像がつくと思いますが、あのバラです。

こちらは十数店舗探し歩いてやっと見つけた、唯一条件の整った指定のバラを問屋さんから箱買いしています。


DSC01979.jpg
まず番線切りで長すぎる茎を切りそろえます。


DSC01980.jpg
次に、葉っぱ、花を茎から抜き取ってしまいます。


DSC01982.jpg
抜き取った茎の部分。これでおおよそ70本分くらいでしょうか?


DSC01981.jpg
バラなのでそれぞれの茎にはトゲや葉のジョイント部分がいくつか付いています。
これらはバルーンが割れる要因になるので取り去ってしまいます。


DSC01983.jpg
それを1本1本地道にカッターで削り取っていく作業。
トゲそのものだけでなく、カッターで切り落とした切り口でもバルーンは割れることがあるので、丁寧に指で触って確認しながら作業を進めていきます。


DSC01986.jpg
トゲがなくなり綺麗になった茎。


DSC01987.jpg
トゲも積もれば山となる。
この作業が一番根気がいり、一番時間がかかります。


DSC01988.jpg
「グルーガン」という工具を利用して


DSC01989.jpg
バラの切り口から飛び出した針金を包み込むように、グリーンの低温溶解プラスティックでコーティングしていきます。


DSC01991.jpg
尖ったまま固まるとバルーンが割れる可能性があるので、これも気をつけて1本1本丁寧にコーティングしていきます。


DSC01993.jpg
これを組む時は、子供の頃にやったキャンプファイアーを思い出すようでちょっと楽しくなります♪


DSC01996.jpg
そしてアロンアルファの登場!
コンビニなどでも買えるものは3gしか入っていないお手軽モデルですが、こちらは20gも入った業務用。
6倍以上入っているのに、お値段はなんと倍くらいというアロンアルファーには嬉しい商品です。

ちなみに…アロンアルファは水分に反応して固化するとテレビでやっていました。水分含有率が高いほうがすぐに、しっかり固まるんだと。乾かすためにフーフー吹いていたのはそんなに意味がなかったと知ってがっかり。



DSC01997.jpg
アロンアルファを茎の頂点と、葉のジョイント部分に塗ります。


DSC01998.jpg
まんべんなく塗れるように取り付けた花を動かしながら固定します。


DSC02007.jpg
そして葉っぱも同様に。アロンアルファが少ないと外れてしまうし、はみ出して固まってもバルーンが割れる原因になるので量も結構重要です。


DSC02008.jpg
取り付けた葉っぱの根本にもトゲが生えているので最後にこちらもカッターで削り取ります。


DSC02055.jpg
そしてやっと完成したのが「あのバラ」となります。
1回の作業で大体100本近くをショー用にアレンジします。



さて今回、魔法にかなり近いネタのあのバラをなぜ「道具」として、こんな内職みたいな工程を載せたのか、それには訳があります。

僕達パフォーマーの演技には急に出来るようになったり、0から10に急に成長するものはほとんどありません。
1つの演目でも何回も反復練習して、反省して少しずつ少しずつ完成へと近づけて行きます。

このバラの演目は、3年ほど前の母の日のイベントで「カーネーションを使ったネタを取り入れて欲しい」という依頼があり、そこで思いついたネタがキッカケとなっています。

バルーンの種類も、花の種類も、ネタの仕込み方も、演じ方も沢山の試行錯誤の上で今の形があり、それすらもまだ完成ではなく試行錯誤の最中です。
このバラはそんな試行錯誤の中で見つけ、色々な経験を経て今の様な手順でカスタマイズされるようになりました。
道具の作り方はその詰まった歴史の縮図。それを載せてみたかったのです。



私はバルーンは割れるから、しぼむから素敵だと思うことがほとんどですが、割れてしぼむバルーンで枯れて散りゆく花を作るというのはあまりに寂しいなぁと思う事がありました。
花を使うネタであるなら、バルーンで作った花か、もしくは本物の花の方が良い。
とも思いましたが、
通常は偽物ゆえ廉価ゆえ価値が低いとされてきた造花を敢えて使うことで、そこには続きゆく美しさとショーで付与されたかけがえの無い思い出を込めた本物以上の価値のある花が表現出来ると思っております。
「割れたり萎んだりする花から生まれる、割れない枯れない花」
これってまさに魔法みたいじゃありません??


そんなこんなでこの内職の様なバラの「製作過程」は自分にとってはショーの時のかけがえの無い一瞬に向けた「秘密の魔法の掛け方」の紹介だったりします。






自分はほとんどの道具や小物を自作したり、ネタも日々思いつくネタ帳から生まれるものがほとんどですが、自分にとってはそれぞれが魔法の道具の制作だったり、新しい魔法の発想だったりします。

まぁ、別に普段はこんなに「魔法」押しな事を言ったり書いたりすることはないですが、ちょっと今日はそんな事を口に出してみたい気分だったのかな。


ただ花ビラを散らしてみたりも別に悪いとは思いませんが、道具は使い手のイメージにより魔法にも、ただのゴミにもなるのでもったいないなぁとも思います。



と、世界のSya窓Vol.2「あれのバラ」でした!
道具ネタはショーネタに匹敵するほど奥が深く、信念が現れてると思うので、定期的にブログに書いてみようかと考えております。まだまだたっくさんありますからね!

それにしても…最近はブログの更新率が悪いなぁ…。
スマートフォンから更新しやすいようにさくらブログアプリとか出たらいいのに…。
posted by Syan at 01:06| Comment(5) | TrackBack(0) | 製作・道具